マーケティングの勉強は何から始めるか:本より先に、人の行動を記録する
結論
マーケティングの勉強は、本やフレームワークより先に、人の行動を観察して記録することから始めるのが近道です。理論は、見たものを整理するための道具として、あとから入れると身につきます。
- マーケティングで差がつくのは、市場の切り取り方のセンス。そのセンスは、人をどれだけ見てきたかでつくられる
- 勉強の順番は、人を見る→仮説を言葉にする→理論で整理する→数字で確かめる。理論から入ると、知識が増えても判断は速くならない
- 知らない市場は、雑誌を読み、話を聞き、同じものを体験して理解した。数字はSQLを独学して自分で引けるようにした
「マーケティングの勉強は、何から始めればいいですか」と聞かれると、私はいつも「本より先に、人を見てください」と答えます。
本やフレームワークが要らないという意味ではありません。順番の話です。この記事では、私自身がどう学んできたかをもとに、勉強の順番と方法を書きます。
なぜ「人を見る」が先なのか
インサイトとはで書いたとおり、マーケティングで差がつくのは、ほぼ「市場の切り取り方のセンス」です。そして、そのセンスは生まれつきではなく、人をどこまで見て、理解しようとしてきたかでつくられます。
理論やフレームワークは、見たものを整理するための道具です。整理するものがない状態で道具だけ集めても、判断は速くなりません。
理論は、見たものを整理する道具。見たものがなければ、整理するものもない。
私が通ってきた4つの段階
1. 作って、届けることを楽しんだ
広告の仕事をする家に育ち、幼稚園のころから絵を描くのが好きでした。中学生のときには、架空の商品の広告を自分でつくって撮影するのが趣味でした。勉強というより遊びでしたが、「誰に、何を、どう見せるか」を考える練習になっていたと思います。
2. 広告学で、理論の言葉を手に入れた
大学では、早稲田大学の商学部で国際マーケティングを専攻し、広告学のゼミに入りました。それまで感覚でやっていたことに、理論の言葉が与えられた時期です。在学中にはビジネスコンテストにも参加し、村田製作所の新卒採用をテーマにしたコンテストで優勝した企画は、全国のテレビCMになりました。
3. 知らない市場を、体で理解した
新卒で担当したのは、女性向けアプリ「LUCRA」でした。私はコスメにもファッションにも詳しくありませんでした。ファッション誌を片っ端から読み、話を聞きに行き、当時流行っていたタピオカを飲み歩きました。理論は知っていても、市場を知らなければ何も決められない。それを思い知った時期です。
4. 数字を、自分で引けるようにした
広告の判断を速くするために、SQLをゼロから独学しました。分析チームに頼っていると、判断が遅れる。不安で仕方なかったので、生のデータを自分で集め、毎日細かく判断するようにしました。書いたクエリは100本を超えています。
明日からできる勉強の方法
| 順番 | やること | 続け方の例 |
|---|---|---|
| 1. 人を見る | 身近な人や、街で見かけた人の行動を観察する | 1日1つ、気になった行動をメモする |
| 2. 言葉にする | 「この人は〇〇なタイプだ」と、理由とセットで書く | メモに「なぜ」を1行足す |
| 3. 理論で整理する | 本やフレームワークを、メモと照らし合わせて読む | 読んだ概念を、自分のメモの例で説明してみる |
| 4. 数字で確かめる | 仮説が本当か、データや結果で確かめる | 仕事の数字を、自分で集計してみる |
1と2は、仕事でなくても今日から始められます。3は、1と2の材料が少したまってからのほうが、本の内容が自分の言葉になります。4は、仕事の中で必要になったときに覚えるのが、いちばん身につきます。
観察メモの書き方の例
「人を見る」を続けるには、書き方を決めておくと楽です。たとえば、次の3行だけのメモで十分です。
| 行 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 見たこと | 評価を入れずに、行動だけを書く | 電車で、隣の人が広告の写真をスマホで撮っていた |
| なぜ | その人がそうした理由の仮説 | あとで誰かに見せたい、または自分で調べたいと思った |
| 使えること | 仕事や広告に生かせそうなこと | 撮りたくなる広告は、その場で検索されなくても、あとで話題になるかもしれない |
3行目は、書けない日があってもかまいません。1行目と2行目を続けることで、人の行動に「なぜ」が浮かぶ習慣ができていきます。その習慣が、インサイトとはで書いたセンスの土台になります。
マーケティングに向いているかどうかを気にしている人は、マーケティングに向いてる人もあわせて読んでみてください。
よくある問い
マーケティングの勉強は、何から始めればいいですか?
身近な人の行動を観察し、「この人はなぜこうするのか」を言葉にして記録することから始めるのがおすすめです。本やフレームワークは、その記録を整理するための道具として、あとから読むと身につきます。
マーケティングの本は読まなくていいのですか?
読んだほうがいいです。ただ、観察の材料がないまま読むと、知識は増えても実際の判断に使えません。自分が見たものと照らし合わせながら読むと、本の内容が自分の言葉になります。
数字や分析の勉強も必要ですか?
必要です。人を見て立てた仮説が正しいかを確かめるのは数字だからです。私は、分析チームに頼らずに判断するために、仕事の中でSQLを独学しました。必要になったときに覚えるのが、いちばん身につきます。
