chapter 02 / 人を見る

マーケティングの勉強は何から始めるか:本より先に、人の行動を記録する

結論

マーケティングの勉強は、本やフレームワークより先に、人の行動を観察して記録することから始めるのが近道です。理論は、見たものを整理するための道具として、あとから入れると身につきます。

  • マーケティングで差がつくのは、市場の切り取り方のセンス。そのセンスは、人をどれだけ見てきたかでつくられる
  • 勉強の順番は、人を見る→仮説を言葉にする→理論で整理する→数字で確かめる。理論から入ると、知識が増えても判断は速くならない
  • 知らない市場は、雑誌を読み、話を聞き、同じものを体験して理解した。数字はSQLを独学して自分で引けるようにした

「マーケティングの勉強は、何から始めればいいですか」と聞かれると、私はいつも「本より先に、人を見てください」と答えます。

本やフレームワークが要らないという意味ではありません。順番の話です。この記事では、私自身がどう学んできたかをもとに、勉強の順番と方法を書きます。

なぜ「人を見る」が先なのか

インサイトとはで書いたとおり、マーケティングで差がつくのは、ほぼ「市場の切り取り方のセンス」です。そして、そのセンスは生まれつきではなく、人をどこまで見て、理解しようとしてきたかでつくられます。

理論やフレームワークは、見たものを整理するための道具です。整理するものがない状態で道具だけ集めても、判断は速くなりません。

理論は、見たものを整理する道具。見たものがなければ、整理するものもない。

私が通ってきた4つの段階

1. 作って、届けることを楽しんだ

広告の仕事をする家に育ち、幼稚園のころから絵を描くのが好きでした。中学生のときには、架空の商品の広告を自分でつくって撮影するのが趣味でした。勉強というより遊びでしたが、「誰に、何を、どう見せるか」を考える練習になっていたと思います。

2. 広告学で、理論の言葉を手に入れた

大学では、早稲田大学の商学部で国際マーケティングを専攻し、広告学のゼミに入りました。それまで感覚でやっていたことに、理論の言葉が与えられた時期です。在学中にはビジネスコンテストにも参加し、村田製作所の新卒採用をテーマにしたコンテストで優勝した企画は、全国のテレビCMになりました。

3. 知らない市場を、体で理解した

新卒で担当したのは、女性向けアプリ「LUCRA」でした。私はコスメにもファッションにも詳しくありませんでした。ファッション誌を片っ端から読み、話を聞きに行き、当時流行っていたタピオカを飲み歩きました。理論は知っていても、市場を知らなければ何も決められない。それを思い知った時期です。

4. 数字を、自分で引けるようにした

広告の判断を速くするために、SQLをゼロから独学しました。分析チームに頼っていると、判断が遅れる。不安で仕方なかったので、生のデータを自分で集め、毎日細かく判断するようにしました。書いたクエリは100本を超えています。

明日からできる勉強の方法

順番やること続け方の例
1. 人を見る身近な人や、街で見かけた人の行動を観察する1日1つ、気になった行動をメモする
2. 言葉にする「この人は〇〇なタイプだ」と、理由とセットで書くメモに「なぜ」を1行足す
3. 理論で整理する本やフレームワークを、メモと照らし合わせて読む読んだ概念を、自分のメモの例で説明してみる
4. 数字で確かめる仮説が本当か、データや結果で確かめる仕事の数字を、自分で集計してみる

1と2は、仕事でなくても今日から始められます。3は、1と2の材料が少したまってからのほうが、本の内容が自分の言葉になります。4は、仕事の中で必要になったときに覚えるのが、いちばん身につきます。

観察メモの書き方の例

「人を見る」を続けるには、書き方を決めておくと楽です。たとえば、次の3行だけのメモで十分です。

行書くこと例
見たこと評価を入れずに、行動だけを書く電車で、隣の人が広告の写真をスマホで撮っていた
なぜその人がそうした理由の仮説あとで誰かに見せたい、または自分で調べたいと思った
使えること仕事や広告に生かせそうなこと撮りたくなる広告は、その場で検索されなくても、あとで話題になるかもしれない

3行目は、書けない日があってもかまいません。1行目と2行目を続けることで、人の行動に「なぜ」が浮かぶ習慣ができていきます。その習慣が、インサイトとはで書いたセンスの土台になります。

マーケティングに向いているかどうかを気にしている人は、マーケティングに向いてる人もあわせて読んでみてください。

よくある問い

マーケティングの勉強は、何から始めればいいですか?

身近な人の行動を観察し、「この人はなぜこうするのか」を言葉にして記録することから始めるのがおすすめです。本やフレームワークは、その記録を整理するための道具として、あとから読むと身につきます。

マーケティングの本は読まなくていいのですか?

読んだほうがいいです。ただ、観察の材料がないまま読むと、知識は増えても実際の判断に使えません。自分が見たものと照らし合わせながら読むと、本の内容が自分の言葉になります。

数字や分析の勉強も必要ですか?

必要です。人を見て立てた仮説が正しいかを確かめるのは数字だからです。私は、分析チームに頼らずに判断するために、仕事の中でSQLを独学しました。必要になったときに覚えるのが、いちばん身につきます。

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