ブランディングとは、すべての接点で共通して伝わるものをつくること
結論
ブランディングとは、顧客や社員、取引先とのすべての接点で、共通して伝わる要素をつくり、伝え続けることです。接点ごとにばらばらなものは、どれだけ良くてもブランドにはなりません。
- サービスも広告もサイトも同じ青なら、人は「このサービス=青」と覚える。共通していないものは、ブランドを形づくれない
- ブランドの資料をつくって終わりではない。サイト、採用、面接、営業担当、メディアでの出方まで、実際に何が伝わっているかを見る
- ブランドは部門を横断するものなので、予算も目的ごとの必要額を積み上げ、重複を除いた全体予算で持つのがいい
「ブランディング」という言葉から、かっこいいロゴや、印象的なテレビCMを思い浮かべる人は多いと思います。それも一部ではありますが、私の考えるブランディングは、もっと地味で、もっと広い仕事です。
ブランディングとは、顧客や社員、取引先とのすべての接点で、共通して伝わる要素をつくり、伝え続けること。
この記事では、この定義の意味と、実際に社名の変更から関わった会社での進め方を書きます。
共通しているものだけが、ブランドになる
あるサービスの色が青だとします。テレビCMも青、Webサイトも青、アプリの中も青。そうすると、接点を重ねるうちに、人の中で「このサービス=青」という認識ができあがります。
一方で、サービスとサイトは青なのに、テレビCMは真っ赤だったらどうでしょう。人は「赤も青も使うサービス」と受け取るかもしれませんが、多くの場合、特定の色と結びついた記憶は残りません。
共通化されていないものは、ブランドになり得ない。
ティファニーの箱の色を思い浮かべてください。あの色が一目でティファニーだと分かるのは、色そのものが特別だからではなく、あらゆる接点で徹底して同じ色が使われてきたからです。
色は分かりやすい例にすぎません。共通させるものは、ロゴかもしれないし、言葉かもしれないし、社員の話し方や振る舞いかもしれない。何を共通させるかは、会社ごとに決める必要があります。
また、すべての接点をまったく同じ内容にする、という意味ではありません。採用の場と営業の場では、伝える相手も内容も違います。それぞれの表現の中に、共通する核を必ず持たせる。それがブランディングだと考えています。
資料ではなく、接点の実態をそろえる
ブランディングでよくある失敗は、ブランドの定義書やロゴ、コピーができた時点で「完了」としてしまうことです。
大事なのは、会社が決めたつもりのものと、接点で実際に伝わっているものを分けて見ることです。どんなにいい定義書があっても、面接官が別のことを話していれば、候補者に伝わるのは面接官の言葉のほうです。
事例:社名から採用の面接まで、接点をそろえた
人材とコンサルティングの会社、BridgeOne(ブリッジワン)のブランド責任者を務めています。
もともとこの会社は「ビーバーズ」という社名で、同じ名前の転職サイトで成長してきました。さらに事業を広げていくために、会社としてのリブランディングに取り組むことになりました。
私が最初にやったのは、代表が掲げている理想の姿を言葉にすることです。そのうえで、社名を「BridgeOne」と名づけ、コーポレートサイトや採用ページのデザインまでを通して手がけました。広報チームも立ち上げ、採用サイトから社内向けの発信まで、同じメッセージが届くように設計しています。
このとき、共通させる対象として洗い出した接点は、次のようなものです。
| 接点 | 相手 | そろえるもの |
|---|---|---|
| コーポレートサイト | 顧客・取引先・候補者 | 会社が目指す姿と、その言葉 |
| 採用サイト | 候補者 | 同じ言葉を、働く人の目線で |
| 面談・面接 | 候補者 | 面接官が話す、会社の説明 |
| 営業担当・営業資料 | 顧客 | 担当者の話す会社の説明と、資料の言葉 |
| メディアでの露出 | 社会 | 取材で伝える事実と核 |
面談や面接、営業担当者の話し方まで対象にしているのは、そこがいちばん強く伝わる接点だからです。サイトで読んだ言葉と、面接で聞いた言葉が同じだったとき、候補者の中でその会社の像がはっきりします。
メディアでの露出は、記事の全文や表現を自社で決められません。だからこそ、取材や資料で伝える事実と核をそろえ、実際の記事で何が伝わったかを確かめるようにしています。
ブランドは、縦割りの組織に通す横串
会社の活動は、マーケティング、採用、営業と、部門ごとに縦に分かれています。ブランディングは、その縦の活動を横に貫いて、共通の要素をつくる仕事です。
だから、予算の取り方が難しくなります。採用の予算だけ、マーケティングの予算だけで説明しようとすると、どの部門から見ても投資全体を説明しきれません。
私の考えでは、次のように持つのがいいと思っています。
- 採用、営業、マーケティングなど、目的ごとに必要な活動と金額、投資する理由を整理し、それぞれ承認を取る
- 同じ記事や活動を複数の目的に使う場合は、重複を除いて合計する
- その合計を、部門を横断する全体予算として管理し、使う
ブランディングとマーケティングの違いは、ブランディングとマーケティングの違いで詳しく書く予定です。
大きな会社のリブランディングでも、やることは同じ
Gunosyにいたころ、ニュースアプリ「グノシー」のリブランディングをプロジェクトリーダーとして率いました。アイコンや画面のデザイン、記事を選ぶ仕組みや運用の体制、広告の商品まで刷新するプロジェクトで、経営、広報、開発、営業、デザイナーなど30人ほどのチームで進め、社内外で100人を超える関係者と調整しました。
規模は大きくても、やっていたことの本質は同じだったと、いまは思います。新しいグノシーとして何を共通して伝えるのかを決め、アプリの中、広告、プレスリリースまで、接点ごとにそろえていく。決算発表の日という動かせない期限の中で、継続率を改善しながら売上を維持し、予定どおりリリースまでたどり着きました。進め方は、リブランディングの進め方で書く予定です。
まだ答えを持っていないこと
最後に、正直に書いておきたいことがあります。ブランディングのリターンをどう定義するかは、私もまだ詰めている途中です。
採用数や露出数、ROIといった一つの数字では、ブランドへの投資を説明しきれません。接点で共通して伝わっているか、それが相手の認識や判断にどう影響したか、各事業にどう寄与したか。それをどう評価するのがいいのか、これからの仕事を通して考えていきます。考えがまとまったら、この記事も更新します。
よくある問い
ブランディングとは、簡単に言うと何ですか?
すべての接点で、共通して伝わるものをつくることです。色やロゴだけでなく、言葉、姿勢、社員の振る舞いも含みます。接点を重ねるごとに同じものが伝わることで、人の中にそのブランドが形づくられます。
すべての接点を、同じデザインにしなければいけないのですか?
同じ内容にする必要はありません。相手や接点に応じて表現は変えてかまいません。大事なのは、その中に共通する要素(核)を必ず持たせることです。
ブランディングの成果は、どう測ればいいですか?
正直なところ、まだ明確な答えを持っていない論点です。採用数や露出数など一つの数字だけでは説明しきれません。接点で共通して伝わっているか、相手の認識や判断にどう影響したかを、どう評価するかを詰めているところです。
