chapter 04 / ブランドとコンセプト

コンセプトの作り方:一つの言葉で、認知から採用までを通す

結論

コンセプトとは、誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ね、すべての打ち手をそこから決められるようにするものです。いいコンセプトは、言葉を聞いただけで、次にやることが決まります。

  • コンセプトは、きれいなキャッチコピーではない。打ち手を決めるための、判断の基準になる言葉
  • 作り方は、課題を一文にする、届けたい人を分解する、刺さる切り口を一つに絞る、すべての打ち手をその言葉で通す、の4つ
  • 「なぞなぞ採用」は、認知から選考までを一つの言葉で通した結果、広告会社への制作要件になり、全国のテレビCMになった

満場一致

ビジネスコンテストでの評価(優勝)

3年以上

全国のテレビCMとして放映された期間

「コンセプトをつくってほしい」と頼まれると、多くの人はかっこいい言葉を探し始めます。けれど、言葉としてきれいなことと、コンセプトとして使えることは別です。

私の考えるコンセプトとは、誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ね、すべての打ち手をそこから決められるようにするものです。

この記事では、大学時代に考えた企画が、そのまま全国のテレビCMになった経験をもとに、コンセプトの作り方を書きます。

コンセプトは、判断の基準になる言葉

コンセプトとキャッチコピーは、よく混同されます。違いを一言で言うなら、キャッチコピーは外に向けた言葉、コンセプトは内側で判断をそろえるための言葉です。

いいコンセプトがあると、商品の仕様、売り方、広告の表現、採用の仕方まで、迷ったときに「それはコンセプトに合っているか」で決められます。逆に、言葉は美しいのに、そこから何も決められないものは、コンセプトとしては機能していません。

事例:一つの言葉が、全国のテレビCMになった

2018年、大学在学中に、村田製作所の新卒採用をテーマにしたビジネスコンテストに参加しました。私が考えた企画は「なぞなぞ採用」です。

課題:知られていない会社が、関東で学生を採る

村田製作所は電子部品の世界的なメーカーです。ただ、企業向けの事業が中心のため、一般の大学生にはあまり知られていませんでした。本社が関西にあることもあり、とくに関東での新卒採用が課題になっていました。

届けたい人を分解する

最初に、「どんな学生に来てほしいのか」を分解しました。

  • 知的好奇心が強い
  • 積極的に動ける
  • 未知の領域を楽しんで開拓できる
  • 会社のカルチャーに合う

刺さる切り口を一つに絞る

この学生たちに最も刺さるものは何か。考えた末に、「なぞなぞ(クイズ・雑学)」に絞りました。知的好奇心が強く、分からないものを楽しめる人ほど、なぞなぞを前にすると解きたくなるはずだ、と考えたからです。届けたい人の性質と、切り口が重なるところを探しました。

すべての打ち手を、その言葉で通す

なぞなぞは、選考に取り入れるだけではありません。「なぞなぞで採用する、ちょっと変わった会社がある」ということ自体を広く知ってもらうプロモーションまで、一つの考え方で通しました。知ってもらう段階から、興味を持ち、応募し、選考を受けるところまでを、なぞなぞという一つの抽象的な言葉で貫いたのです。

このコンテストは、マーケティングに限らずビジネスプラン全般を競うものでしたが、私はあえてマーケティングの視点に振り切りました。結果は満場一致で優勝。そして、この企画はそのまま広告会社への制作要件になり、テレビCMとして実現しました。CMは3年以上、全国で放映されています。

いいコンセプトは、聞いただけで次にやることが決まる。

「なぞなぞ」という言葉は、表現の指示ではなく、選考でも発信でも、何をするかを決める基準として機能していました。

コンセプトの作り方:4つの手順

この経験を手順に直すと、次の4つになります。

手順やることなぞなぞ採用では
1. 課題を一文にする何を解決したいのかを、条件ごと書く知られていない会社が、関東で学生を採りたい
2. 届けたい人を分解する性質を、行動に表れる言葉で並べる知的好奇心、積極性、未知を楽しむ、カルチャーに合う
3. 刺さる切り口を一つに絞る届けたい人の性質と、いちばん重なるものを選ぶなぞなぞ(クイズ・雑学)
4. すべての打ち手をその言葉で通す知ってもらう段階から最後まで、同じ言葉で説明できるか確かめる選考と、「変わった採用をする会社」としての発信

手順2が雑だと、手順3で選ぶ切り口が誰にでも当てはまるものになります。「優秀な学生」のような言葉では、なぞなぞにはたどり着けませんでした。届けたい人を分解するところは、マーケティングとはで書いた「市場を定義する」作業そのものです。

いいコンセプトか確かめる3つの問い

できあがった言葉が使えるかどうかは、次の3つで確かめています。

  1. 一言で言えるか:説明に3文以上かかるなら、まだ束ねきれていない
  2. 届けたい人が、自分ごとにできるか:その人が聞いて「自分のことだ」と思えるか
  3. すべての打ち手を、その言葉で説明できるか:商品、売り方、広告、採用まで、「なぜそうするのか」に答えられるか

3つ目は、ブランディングの考え方ともつながっています。コンセプトが一つの言葉になっていると、サイトにも、営業資料にも、面接にも、同じ核を持たせやすくなるからです。接点ごとにそろえる考え方は、ブランディングとはで書いています。

よくある問い

コンセプトとは、簡単に言うと何ですか?

誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ねたもので、すべての打ち手を決めるときの基準になるものです。キャッチコピーと違い、外に出すためというより、内側で判断をそろえるための言葉です。

コンセプトとキャッチコピーの違いは何ですか?

キャッチコピーは、相手の目に触れる言葉です。コンセプトは、そのキャッチコピーも含めて、商品、売り方、伝え方のすべてを決める元になる考え方です。コンセプトから、いくつものキャッチコピーが生まれます。

いいコンセプトかどうかは、どう判断すればいいですか?

その言葉を聞いた人が、次に何をすればいいか分かるかどうかで判断しています。一言で言えること、届けたい人が自分ごとにできること、すべての打ち手がそこから説明できること。この3つがそろっていれば、使えるコンセプトです。

出典

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