コンセプトの作り方:一つの言葉で、認知から採用までを通す
結論
コンセプトとは、誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ね、すべての打ち手をそこから決められるようにするものです。いいコンセプトは、言葉を聞いただけで、次にやることが決まります。
- コンセプトは、きれいなキャッチコピーではない。打ち手を決めるための、判断の基準になる言葉
- 作り方は、課題を一文にする、届けたい人を分解する、刺さる切り口を一つに絞る、すべての打ち手をその言葉で通す、の4つ
- 「なぞなぞ採用」は、認知から選考までを一つの言葉で通した結果、広告会社への制作要件になり、全国のテレビCMになった
満場一致
ビジネスコンテストでの評価(優勝)
3年以上
全国のテレビCMとして放映された期間
「コンセプトをつくってほしい」と頼まれると、多くの人はかっこいい言葉を探し始めます。けれど、言葉としてきれいなことと、コンセプトとして使えることは別です。
私の考えるコンセプトとは、誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ね、すべての打ち手をそこから決められるようにするものです。
この記事では、大学時代に考えた企画が、そのまま全国のテレビCMになった経験をもとに、コンセプトの作り方を書きます。
コンセプトは、判断の基準になる言葉
コンセプトとキャッチコピーは、よく混同されます。違いを一言で言うなら、キャッチコピーは外に向けた言葉、コンセプトは内側で判断をそろえるための言葉です。
いいコンセプトがあると、商品の仕様、売り方、広告の表現、採用の仕方まで、迷ったときに「それはコンセプトに合っているか」で決められます。逆に、言葉は美しいのに、そこから何も決められないものは、コンセプトとしては機能していません。
事例:一つの言葉が、全国のテレビCMになった
2018年、大学在学中に、村田製作所の新卒採用をテーマにしたビジネスコンテストに参加しました。私が考えた企画は「なぞなぞ採用」です。
課題:知られていない会社が、関東で学生を採る
村田製作所は電子部品の世界的なメーカーです。ただ、企業向けの事業が中心のため、一般の大学生にはあまり知られていませんでした。本社が関西にあることもあり、とくに関東での新卒採用が課題になっていました。
届けたい人を分解する
最初に、「どんな学生に来てほしいのか」を分解しました。
- 知的好奇心が強い
- 積極的に動ける
- 未知の領域を楽しんで開拓できる
- 会社のカルチャーに合う
刺さる切り口を一つに絞る
この学生たちに最も刺さるものは何か。考えた末に、「なぞなぞ(クイズ・雑学)」に絞りました。知的好奇心が強く、分からないものを楽しめる人ほど、なぞなぞを前にすると解きたくなるはずだ、と考えたからです。届けたい人の性質と、切り口が重なるところを探しました。
すべての打ち手を、その言葉で通す
なぞなぞは、選考に取り入れるだけではありません。「なぞなぞで採用する、ちょっと変わった会社がある」ということ自体を広く知ってもらうプロモーションまで、一つの考え方で通しました。知ってもらう段階から、興味を持ち、応募し、選考を受けるところまでを、なぞなぞという一つの抽象的な言葉で貫いたのです。
このコンテストは、マーケティングに限らずビジネスプラン全般を競うものでしたが、私はあえてマーケティングの視点に振り切りました。結果は満場一致で優勝。そして、この企画はそのまま広告会社への制作要件になり、テレビCMとして実現しました。CMは3年以上、全国で放映されています。
いいコンセプトは、聞いただけで次にやることが決まる。
「なぞなぞ」という言葉は、表現の指示ではなく、選考でも発信でも、何をするかを決める基準として機能していました。
コンセプトの作り方:4つの手順
この経験を手順に直すと、次の4つになります。
| 手順 | やること | なぞなぞ採用では |
|---|---|---|
| 1. 課題を一文にする | 何を解決したいのかを、条件ごと書く | 知られていない会社が、関東で学生を採りたい |
| 2. 届けたい人を分解する | 性質を、行動に表れる言葉で並べる | 知的好奇心、積極性、未知を楽しむ、カルチャーに合う |
| 3. 刺さる切り口を一つに絞る | 届けたい人の性質と、いちばん重なるものを選ぶ | なぞなぞ(クイズ・雑学) |
| 4. すべての打ち手をその言葉で通す | 知ってもらう段階から最後まで、同じ言葉で説明できるか確かめる | 選考と、「変わった採用をする会社」としての発信 |
手順2が雑だと、手順3で選ぶ切り口が誰にでも当てはまるものになります。「優秀な学生」のような言葉では、なぞなぞにはたどり着けませんでした。届けたい人を分解するところは、マーケティングとはで書いた「市場を定義する」作業そのものです。
いいコンセプトか確かめる3つの問い
できあがった言葉が使えるかどうかは、次の3つで確かめています。
- 一言で言えるか:説明に3文以上かかるなら、まだ束ねきれていない
- 届けたい人が、自分ごとにできるか:その人が聞いて「自分のことだ」と思えるか
- すべての打ち手を、その言葉で説明できるか:商品、売り方、広告、採用まで、「なぜそうするのか」に答えられるか
3つ目は、ブランディングの考え方ともつながっています。コンセプトが一つの言葉になっていると、サイトにも、営業資料にも、面接にも、同じ核を持たせやすくなるからです。接点ごとにそろえる考え方は、ブランディングとはで書いています。
よくある問い
コンセプトとは、簡単に言うと何ですか?
誰に何を届けるのかを一つの言葉に束ねたもので、すべての打ち手を決めるときの基準になるものです。キャッチコピーと違い、外に出すためというより、内側で判断をそろえるための言葉です。
コンセプトとキャッチコピーの違いは何ですか?
キャッチコピーは、相手の目に触れる言葉です。コンセプトは、そのキャッチコピーも含めて、商品、売り方、伝え方のすべてを決める元になる考え方です。コンセプトから、いくつものキャッチコピーが生まれます。
いいコンセプトかどうかは、どう判断すればいいですか?
その言葉を聞いた人が、次に何をすればいいか分かるかどうかで判断しています。一言で言えること、届けたい人が自分ごとにできること、すべての打ち手がそこから説明できること。この3つがそろっていれば、使えるコンセプトです。
出典
