chapter 04 / ブランドとコンセプト

ブランディングとマーケティングの違い:縦の活動と、横の串

結論

マーケティングは、市場を定義し、目的ごとに成果を最大化する活動です。ブランディングは、その縦に分かれた活動を横に貫いて、すべての接点で共通して伝わるものをつくる活動です。どちらかではなく、縦と横の関係にあります。

  • マーケティングは「誰に、何を、どう届けて、何を最大化するか」を決める。採用・営業・販促など、目的ごとの縦の活動になる
  • ブランディングは、その縦の活動すべてに共通する要素をつくり、そろえる横串。中身は経営の設計に近い
  • 横串なので、一部門の予算では説明できない。目的ごとの必要額を積み上げ、重複を除いた全体予算で持つ

「ブランディングとマーケティングは、何が違うのですか」。この質問への答えは、人によってかなり違います。ブランディングはマーケティングの一部だという人もいれば、まったく別物だという人もいます。

私の整理は、マーケティングは縦の活動、ブランディングはそれを貫く横の串です。この記事では、その意味と、実務での付き合わせ方を書きます。

マーケティング:目的ごとに成果を最大化する

マーケティングとはで書いたとおり、私はマーケティングを「複雑に絡み合う条件の中で、市場(=ターゲット)を定義し、目的を最大化する行為」と定義しています。

目的は、売上だったり、継続率だったり、採用の応募数だったりします。目的が違えば、定義する市場も、打ち手も変わります。だから会社の中では、マーケティング、採用、営業、販促と、目的ごとに縦に分かれた活動になります。

ブランディング:すべての接点で共通して伝わるものをつくる

一方、ブランディングとはで書いたとおり、ブランドとは「すべての接点で共通して伝わる要素」です。広告で見た印象と、サイトで読んだ言葉と、面接で話した社員の雰囲気が、同じものとして伝わる。そのときに、人の中にブランドができあがります。

縦の活動は、放っておくとそれぞれ最適化されていきます。採用は採用の言葉で、営業は営業の言葉で話すようになる。ブランディングは、その縦の活動をまたいで、共通して伝えるものを決め、そろえ続ける仕事です。

組織は縦割り。ブランドは横串。

マーケティングブランディング
向き縦(目的ごと)横(接点をまたぐ)
決めること誰に、何を、どう届け、何を最大化するかすべての接点で、何を共通して伝えるか
成果の測り方目的ごとの数字(売上、応募数など)接点で共通して伝わっているか(定義は検討中)
担う人各部門経営、または経営に近い横断の役割

ブランディングは、経営の設計に近い

ブランディングを「かっこいいCMをつくること」だと捉えると、広告の一部に見えます。けれど、すべての接点をそろえようとすると、サイトやCMだけでなく、営業担当の話し方、面接での説明、社内の発信まで対象になります。

それは、会社が外とどう関わるかという、コミュニケーション全体の設計です。だから私は、ブランディングの中身は経営管理や経営企画に近いと考えています。

ブランド責任者を務めているBridgeOneでは、代表が掲げる理想の姿を言葉にするところから始め、社名、コーポレートサイト、採用ページ、広報の発信までをそろえてきました。これは広告の仕事というより、会社の在り方を接点ごとに翻訳していく仕事です。

予算の持ち方が、いちばん違う

縦と横の違いが、最もはっきり表れるのが予算です。

マーケティングの予算は、目的ごとに説明できます。採用広告にこれだけ使って、応募がこれだけ増えた、というふうに。ところが、ブランディングは部門を横断するので、一部門の成果と費用だけでは、投資全体を説明しきれません。

私が考えているのは、次の持ち方です。

  1. 採用、営業、マーケティングなど、目的ごとに必要な活動と金額、投資する理由を整理し、それぞれ承認を取る
  2. 同じ活動や記事を複数の目的で使う場合、費用を目的ごとに重複して計上しない
  3. 重複を除いた合計を、部門を横断する全体予算として管理し、使う

目的ごとの理由と成果を説明できる状態を保ちながら、財布は一つにする。そうすると、ブランディングの投資を、縦の言葉でも横の言葉でも説明できるようになります。

混同すると起きること

ブランディングとマーケティングを区別しないまま進めると、よく次のようなことが起きます。

  • 広告ごとに言うことが変わる:キャンペーンごとに最適な訴求を選んでいるうちに、会社として何を伝えたいのかが分からなくなる
  • 採用と営業で、別の会社のように見える:採用サイトでは挑戦を語り、営業では安定を語る。どちらも正しくても、共通する核がないとブランドにならない
  • ブランドの予算が、毎年削られる:一部門の成果だけで説明しようとして、説明しきれない

どれも、縦の最適化が進み、横の串が抜けたときに起きることです。

どちらから手をつけるべきか

順番で言えば、最上流は「誰に向けるか」を決めることなので、市場の定義が先です。ただ、市場を定義したあとに、何を共通して伝えるかを決めないまま施策を増やすと、接点ごとにばらばらになっていきます。

だから実務では、市場を定義したら、すぐに「その人に、どの接点でも同じように伝えたいことは何か」を決めるようにしています。マーケティングとブランディングは、順番に片づけるものではなく、縦と横を同時に編んでいくものだと考えています。

よくある問い

ブランディングとマーケティングの違いは何ですか?

マーケティングは、市場を定義し、目的ごとに成果を最大化する活動です。ブランディングは、その活動をまたいで、すべての接点で共通して伝わる要素をつくる活動です。マーケティングが縦、ブランディングが横の関係にあります。

ブランディングとマーケティングは、どちらを先にやるべきですか?

最上流の「誰に向けるか」を決めるのはマーケティングの仕事なので、市場の定義が先です。ただ、何を共通して伝えるかを決めないまま施策を増やすと、接点ごとにばらばらになるので、早い段階で両方を考え始めるのが理想です。

ブランディングの予算は、どの部門が持つべきですか?

部門を横断するものなので、一部門の予算で持つと説明がつきません。採用・営業・マーケティングなど目的ごとに必要な活動と金額を整理して承認を取り、重複を除いた合計を全体予算として管理するのがいいと考えています。

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