chapter 01 / 市場を定義する

マーケティングとは、市場を定義すること。一言で言える定義とその理由

結論

マーケティングとは、複雑に絡み合う条件の中で、市場(=ターゲット)を定義し、目的を最大化する行為です。ターゲットが定まれば、届けるものも届け方も決まっていきます。

  • 4Pやファネルは、市場を定義したあとに決まる要素。最上流にあるのは「誰を市場とするか」の定義
  • ただし、ターゲットだけでは決まらない。競合や経済、会社の体力や思想という条件の中で決めるのがマーケティング
  • 大学時代の採用コンテストでは、求める学生の像を分解して一つの切り口に絞った。その企画は全国のテレビCMとして3年以上流れた

3年以上

学生時代の企画が、全国のテレビCMとして放映された期間

1〜2名

Gunosyで、1つのプロダクトのマーケティングを担っていた人数

マーケティングの定義は、本によっても人によっても違います。4P(製品・価格・流通・販促)に分ける説明もあれば、「売れる仕組みをつくること」という言い方もあります。どれも間違いではありません。

ただ、社会人になってから7年あまり、広告とマーケティングの現場にいて、私が一言で言うならこうなります。

マーケティングとは、複雑に絡み合う条件の中で、市場(=ターゲット)を定義し、目的を最大化する行為である。

この記事では、この定義の中身と、私がそう考えるようになった経緯を書きます。

いちばん上流にあるのは「市場の定義」

マーケティングの仕事を上流から順に並べると、いちばん上に来るのは「誰を市場とするか」を決めることです。

市場を定義するとは、ターゲットを定義することです。ターゲットが決まれば、その人に何を届けるべきか(プロダクトやサービス)が決まり、どこで、いくらで、どう伝えるかも決まっていきます。4Pの4つの要素は、この定義を受けて決まるものだと私は捉えています。

順番を逆にすると、何が起きるか。先に「この商品をどう売るか」から考えると、広告のクリエイティブやチャネルの議論は進みますが、そもそも誰に向けたものかが曖昧なままになります。施策ごとに想定する相手がずれ、数字が出ても、なぜ出たのかを説明できません。

順番考えること例
1市場(ターゲット)の定義誰の、どんな状況に向けるのか
2届けるものの定義その人にとって何が価値になるのか
3届け方の設計どこで、いくらで、どう伝えるか
4実行と検証広告・販促・営業、数字での振り返り

ただし、ターゲットだけでは決まらない

ここで一つ、但し書きがあります。理屈の上ではターゲットが決まれば商品も決まりますが、現実はそう単純ではありません。

競合がすでに同じ相手を押さえているかもしれない。景気が変われば、同じ人でも財布の紐の固さが変わる。会社には、つくれるものとつくれないものがあり、やりたいこととやりたくないこと(思想)もある。

マーケティングは、こうした条件が複雑に絡み合う中で、それでも「ここが私たちの市場だ」と定義する仕事です。冒頭の定義にわざわざ「複雑に絡み合う条件の中で」と入れているのは、このためです。

差が生まれるのは、ほぼすべて「市場の切り取り方」です。

同じ商品、同じ予算でも、市場の切り取り方が違えば結果はまったく変わります。どう切り取るのか、切り取ったあとに何をするのかは、マーケティング戦略とはで詳しく書いています。

そう考えるようになった経緯

広告の家に生まれて、広告学を学んだ

祖父母も父も広告会社に勤めていた家で育ちました。幼稚園のころから絵を描くのが好きで、中学生のときには、架空の商品の広告を自分でつくって撮影するのが趣味でした。大学は早稲田大学の商学部に進み、国際マーケティングを専攻して、広告学のゼミに入りました。

このころの私にとって、マーケティングは「いい広告をつくること」とほぼ同じ意味でした。それが変わったのは、学生時代に参加したコンテストと、社会人になってからの現場です。

求める学生を分解したら、全国のテレビCMになった

2018年、大学在学中に、村田製作所の新卒採用をテーマにしたビジネスコンテストに参加しました。

村田製作所は電子部品の世界的なメーカーですが、企業向けの事業が中心のため、学生からの知名度は高くありませんでした。本社が関西にあることもあり、とくに関東での採用が課題でした。

このコンテストは、マーケティングに限らずビジネスプラン全般を競うものでした。私はあえて、マーケティングの視点に振り切りました。最初にやったのは、「どんな学生に来てほしいのか」を分解することです。

  • 知的好奇心が強い
  • 積極的に動ける
  • 未知の領域を楽しんで開拓できる
  • 会社のカルチャーに合う

この人たちに最も刺さる切り口は何か。考えた末にたどり着いたのが「なぞなぞ(クイズ・雑学)」でした。採用の選考になぞなぞを取り入れるだけでなく、「そんな変わった採用をしている会社がある」ということ自体を広く知ってもらう。認知から応募、選考までを、なぞなぞという一つの考え方で通す提案です。

結果は満場一致で優勝でした。そして、この提案はそのまま広告会社への制作要件になり、テレビCMとして実現しました。CMは3年以上、全国で放映されています。

このとき学んだのは、市場を定義すると、打ち手が自然に決まるということでした。「知的好奇心が強く、未知を楽しめる学生」という定義がなければ、なぞなぞという答えは出てこなかったはずです。この企画の考え方は、コンセプトの作り方でも詳しく書いています。

新卒で「プロダクトの全意思決定」を任された

新卒で入ったGunosyでは、マーケティングチームの役割が「プロダクトのすべての意思決定」でした。誰に向けたプロダクトなのか、どんな機能を優先するのか、予算をどう配分するのか、どう伝えるのか。1つのプロダクトのマーケティングを担当するのは1〜2人で、新卒1年目から経営会議で説明する立場に立たされました。

最初に担当した女性向けアプリ「LUCRA」では、私自身はコスメやファッションにほとんど詳しくありませんでした。ファッション誌を片っ端から読み、実際に話を聞きに行き、当時流行っていたタピオカを飲み歩きました。ターゲットを定義しても、その人のことを知らなければ、何も決められなかったからです。

広告だけを見ていたら、「マーケティング=広告」のままだったと思います。プロダクトの意思決定まで任されたことで、広告はマーケティングの最後の工程の一つであり、その前に「誰のためのものか」を決める仕事がある、とはっきり分かりました。

「誰を市場とするか」から始めるために

明日からの仕事で、この定義をどう使うか。私がいつも最初に書き出すのは、次の3つです。

  1. 目的:何を最大化したいのか(売上、継続率、応募数など)
  2. 条件:競合、予算、会社ができること・やりたくないこと
  3. 市場:その目的と条件の中で、誰に向けるのか

3つ目を一文で言えないうちは、広告やクリエイティブの議論に入らないようにしています。言えないまま進めると、あとで必ず「そもそも誰に向けていたんだっけ」という話に戻るからです。

切り取ったターゲットを、どこまで深く理解するか。その「人を見る」力については、インサイトとはで書いています。

よくある問い

マーケティングとは、簡単に言うと何ですか?

誰を市場(ターゲット)とするかを決め、その人に向けて目的を最大化することです。売り方や広告は、その定義が決まったあとに決まる要素だと考えています。

4Pなどの定義とは違うのですか?

4P(製品・価格・流通・販促)は、マーケティングを要素に分けた見方です。否定するものではなく、その4つを決める前に「誰に向けたものか」を定義する工程があり、そこが最上流だという考えです。

ターゲットを決めれば、商品も決まるのですか?

理屈の上では決まりますが、実際には競合の状況、経済、会社が実現できるかどうか、会社の思想といった条件が絡みます。その条件の中で市場を定義するところまでを含めて、マーケティングだと考えています。

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