chapter 07 / AI時代の余白

ストーリーの差は、最後は歴史で決まる:AIの時代に残るもの

結論

これからの事業で差がつくのはストーリーです。そして、人が魅力を感じるストーリーと、AIがつくったストーリーの差を最後に決めるのは、歴史だと考えています。歴史はいまからはつくれない、有限の資産です。

  • ロジックで組み立てられることの多くはAIが担う。背景やストーリーのないサービスは、AIにすぐ模倣・代替される
  • ストーリーを語ることは、AIにもできる。差を生むのは、その背景に本当の歴史があるかどうか
  • 日本には歴史がある。とくに地方には、塗り替えられていない歴史が残っている。それを事業に変えられれば、日本の未来は変わる

約3分の2

日本の総生産のうち、東京圏以外の地方が占める割合(2022年度)

ロジックで組み立てられることの多くは、これからAIが担っていきます。広告の集計も、分析も、レポートも。ストーリーを語ることでさえ、AIはそれらしくこなせるようになりました。

では、人が魅力を感じるストーリーと、AIがつくったストーリーの差は、どこにあるのか。私の答えは、歴史です。この記事では、そう考える理由を書きます。

残るのは、圧倒的な技術か、人のストーリー

背景やストーリーのないサービスやメディアは、AIにいつでもすぐに模倣され、代替されます。どれだけよくできていても、ロジックだけで組み立てたものは、同じAIを使う誰かが同じものをつくれるからです。

これから残るのは、二つのどちらかだと考えています。圧倒的なAIの技術を持つサービスか、人のストーリーが残っているものか。

ストーリーの差は、最後は歴史で決まる

ストーリーを語ること自体は、誰にでも、AIにもできます。けれど、人が本当に魅力を感じるストーリーには、それを裏づける時間の積み重ねがあります。

人のストーリーとAIのストーリーの差は、歴史しかない。

ハイブランドのファッションを思い浮かべてみてください。LVMHのような会社が束ねているブランドの多くは、ヨーロッパで生まれ、長い歴史を持っています。経済の規模ではアメリカのほうが大きくても、ハイブランドの中心はヨーロッパにある。その差は、歴史の厚みにあると私は見ています。歴史があるからストーリーが生まれ、ストーリーがあるからブランドになる。

歴史は、いまからはつくれない

歴史の特徴は、いまからつくろうとしても、つくれないことです。何百年、何千年という時間がかかります。金のように、量が限られた資産です。そして、AIにも真似できません。

日本には、その歴史がたくさんあります。ただ、それがお金になっていません。

都市の歴史は、上から塗り替えられていきます。都市化が進むほど、ニューヨークのように、街の歴史は浅くなっていく。一方で、地方には歴史が残っています。けれど、その地方は衰退している。

地方に眠る歴史を、事業に変える

日本経済の約3分の2は、東京圏以外の地方にあります。その地方に、塗り替えられていない歴史が眠っている。私は、それを起こせれば、日本の未来は本当に変わると思っています。

私の屋号「mood107」は、ロジックとストーリーの両方から事業を動かすという考え方から来ています。ツールの開発のようなロジックの仕事から、広告運用、ブランディング、メディア、そして地方まで。ロジックからストーリーへ並ぶ仕事のいちばん先に、地方を置いているのは、そこに歴史があるからです。

地方と企業の組み方は、場所を市場にするで書いています。

自社に歴史がなくても、できること

「うちの会社には、長い歴史なんてない」と思う人もいるかもしれません。それでも、できることはあります。

  1. 自社の中にある時間を掘り起こす:創業の理由、続けてきたこと、関わってきた人。短くても、本当にあった時間はストーリーの土台になる
  2. 歴史を持つ相手と組む:土地、産業、職人、地域の会社。歴史を持つ相手と組むことで、自社だけではつくれないストーリーを持てる
  3. これからの時間を、残していく:いまの判断や取り組みを、記録して残す。それが、何十年後かの歴史になる

AIの時代に、人にしかつくれない余白とは、時間が積み重ねてきたものだと思います。ロジックはAIと分け合いながら、その余白を大事にしていく。それが、これからのマーケティングに求められることだと考えています。

よくある問い

AIの時代に、ストーリーはなぜ大事なのですか?

ロジックで組み立てられる部分は、AIによって誰でも同じように再現できるようになるからです。差がつくのは、人が魅力を感じるストーリーを持っているかどうかになっていきます。

AIがつくったストーリーと、人のストーリーの違いは何ですか?

語ること自体は、AIにもできます。違いは、その背景に本当の歴史があるかどうかだと考えています。歴史は、いまからつくろうとしても、何百年、何千年とかかります。

歴史のない会社は、どうすればいいですか?

自社に長い歴史がなくても、歴史を持つ土地や人、産業と組むことはできます。地方には、まだ事業に変わっていない歴史が多く残っています。そこと組むことも、ストーリーを持つ方法の一つです。

出典

同じ章の記事

chapter 07

ほかの章から