AIマーケティングで変わること、変わらないこと:ロジックとストーリー
結論
AIマーケティングで変わるのは、ロジックで組み立てられる仕事です。集計、分析、入稿、レポートの多くはAIが担うようになります。変わらないのは、人が載せるストーリーと、人と人の最後の合意。これからの価値は、その両方を叶える「あいだ」にあります。
- 広告運用の現場では、媒体ごとの集計、要因の分析、入稿、レポートづくりといった作業の多くを、すでにAIとツールに任せられる
- 背景やストーリーのないサービスやメディアは、AIにすぐ模倣・代替される。残るのは、圧倒的な技術か、人のストーリーがあるもの
- ロジックだけでも、ストーリーだけでも足りない。両方を持てる人と会社が、AIの時代に差をつくる
2か月で7社
個人開発したAI広告運用ツールの導入(リリースから)
AIで、マーケティングの仕事はどう変わるのか。いま、多くの人が気にしている問いだと思います。
私は、広告運用のためのAIツールを、企画から開発まで1人でつくっています。その経験から言えば、答えははっきりしています。ロジックで組み立てられる仕事は、AIが担うようになる。人が載せるストーリーは、人にしかつくれない。
この記事では、変わることと変わらないことを、具体的に書きます。
変わること:ロジックで組み立てられる仕事
広告運用の現場には、毎日くり返される作業がたくさんあります。
- 媒体ごとにばらばらの数字を集めて、一つの表にまとめる
- 予約単価が上がった理由を、配信の数字から探す
- 新しい広告を入稿し、予算や入札を調整する
- 週次・月次のレポートをつくる
こうした作業は、すでにAIとツールに任せられます。私が開発している「AD-BUDDY」は、Google・Meta・X・TikTokの広告データを名寄せして一つにまとめ、AIのアドバイザーが数字の変化の要因を分析して、次の一手まで提案するツールです。媒体への一括入稿や、レポートの自動作成もできます。リリースから2か月で7社に導入されました。
開発で大事にしたのは、オペレーションの作業を限りなく削ぎ落とし、本来時間をかけるべきマーケティングの思考に時間を使えるようにすることです。
変わらないこと:人が載せるストーリー
一方で、AIがどれだけ進んでも、変わらないものがあります。
誰に向けるかを決めること
マーケティングとはで書いたとおり、マーケティングの最上流は市場(=ターゲット)の定義です。AIはデータから候補を出すことはできますが、競合、会社の体力、会社の思想まで含めて「ここが私たちの市場だ」と決めるのは、人の仕事です。
ストーリーを載せること
背景やストーリーのないサービスやメディアは、AIにいつでもすぐに模倣され、代替されます。これから残るのは、圧倒的なAIの技術を持つサービスか、人のストーリーが残っているもの。そのどちらかだと考えています。
ストーリーを語ることは、AIにもできる。違いを生むのは、そこに本当の背景があるかどうか。
人と人の、最後の合意
広報や事業開発のような、人と人、会社と会社の関係をつくる仕事も残ります。候補の企業に目星をつけることはAIでもできます。けれど、最後に合意するのは人と人です。アライアンスとはで書いたような仕事は、人が介在する価値が最もはっきり残る領域です。
これからの価値は、ロジックとストーリーの「あいだ」にある
ここで誤解してほしくないのは、「ロジックはAIに任せて、人はストーリーだけ考えればいい」という話ではないことです。
ロジックだけで組み立てた仕事は、同じAIを使う競合と同じ答えにたどり着きます。ストーリーだけで、数字を読めない仕事は、事業を前に進められません。どちらか一方ではなく、その両方を叶える、白でも黒でもないグレーな領域。そこに、これからのマーケターの価値があると考えています。
私の屋号「mood107」も、この考え方から来ています。ロジックの仕事であるツールの開発から、広告運用、ブランディング、メディア、そして地方まで。ロジックからストーリーへと並ぶ仕事の、どこにも偏らずに両方を持つことを目指しています。
1人でツールをつくって分かったこと
AD-BUDDYは、私がエンジニアではない立場から、生成AIを使って1人で開発しています。データベースの設計から、各媒体との連携、決済まで、B2Bのサービスとして成り立つ規模まで、自分でつくりきりました。
つくってみて分かったのは、AIは「何をつくるか」が決まっているときに、驚くほど速いということです。逆に、誰のどんな困りごとを解くのかが曖昧なままだと、AIはいくらでも機能を足してくれますが、使われるものにはなりません。広告運用の現場で何に困っていたかを知っていたからこそ、つくるものを決められました。ここでも、最上流は「誰に向けるか」でした。
AIと、どう仕事を分けるか
最後に、私がAIとの分担を考えるときの基準をまとめます。
| AIとツールに任せる | 人がやる | |
|---|---|---|
| 判断の材料 | 集計、名寄せ、要因の分析、レポート | どの数字を目的にするかを決める |
| 実行 | 入稿、予算・入札の調整、クリエイティブの展開 | 何を伝えるか、どんなストーリーを載せるかを決める |
| 関係 | 候補の洗い出し、提案の材料集め | 相手と会い、合意をつくる |
任せられる作業を任せたぶん、人は人を見る時間を増やせます。AIの時代こそ、インサイトとはで書いた「人を見る力」の価値が上がっていくと思います。
よくある問い
AIマーケティングとは何ですか?
AIを使って、マーケティングの分析、制作、運用、レポートなどを行うことです。広告の集計や要因の分析、クリエイティブの量産、入札や予算の調整など、ロジックで組み立てられる作業ほど、AIで置き換えやすくなっています。
AIで、マーケターの仕事はなくなりますか?
ロジックで組み立てられる作業の多くは、AIが担うようになると考えています。一方で、誰に向けるかを決めること、人が共感するストーリーを載せること、人と人の合意をつくることは、人の役割として残ります。
AIマーケティングは、何から始めればいいですか?
毎日・毎週くり返している作業のうち、手順が決まっているものから任せるのが近道です。集計やレポートをAIとツールに任せ、空いた時間を、人を見ることや、戦略を考えることに使います。
