アライアンスとは:自社だけでは入れない市場に、組んで入る
結論
アライアンスとは、企業同士が互いの持っているものを持ち寄り、単独ではできないことを実現する提携です。成否を分けるのは契約の形より、相手にとっての得を自分ごととして考え抜き、合意できる形を何度でもつくり直せるかどうかです。
- アライアンスは、自社にない「信頼」「関係」「拠点」「コンテンツ」を借りて、単独では入れない市場に入るための手段
- ラジオ局を自分で回って100を超える番組を集め、出資元から予算を得て再生1,000万回超の動画をつくり、地方新聞社と組んで十数社を獲得した
- 進め方は、相手の持っているものを知る、相手の得を考える、自分でつながる、何度でも提案し直す、の4つ
100以上
ラジオ局を回って集めた番組(グノシーラジオ)
1,000万回超
出資元の予算で制作した動画のアプリ内再生
十数社
地方新聞社との座組で獲得した中堅企業
アライアンスとは、企業同士が互いの持っているものを持ち寄り、単独ではできないことを実現する提携のことです。業務提携、資本提携、共同での事業など、形はいくつもあります。
私はこれまで、ラジオ局、通信会社、地方新聞社など、立場も業界も違う相手とのアライアンスを担当してきました。この記事では、その3つの事例をもとに、アライアンスの意味と、合意にたどり着くまでの進め方を書きます。
アライアンスは「自社にないもの」を借りる手段
自社だけで新しい市場に入ろうとすると、どうしても足りないものが出てきます。
- その市場の人からの信頼
- その市場の人との関係
- 対面で会える拠点
- 人を集められるコンテンツ
広告で時間をかけて積み上げることもできますが、すでにそれを持っている相手と組めば、一気に手に入ります。アライアンスは、自社だけでは入れない市場に入るための手段です。
事例1:ラジオ局を自分で回り、100を超える番組を集めた
Gunosyで、音声コンテンツの新規事業を担当しました。探索の末、ニュースアプリ「グノシー」の一つの機能として展開することで合意し、「グノシーラジオ」として、機能の開発からコンテンツの調達までを受け持ちました。
音声のサービスは、聞きたい番組がなければ使われません。そこで、ラジオ局各社を自分で回り、番組の提供をお願いしてまわりました。結果として、100を超えるコンテンツを確保し、常に100以上の番組がある状態をつくっています。聞いた人がどれだけ聞き続けるか(聴取継続率)は、最大70%に達しました。
事例2:出資元から予算を得て、再生1,000万回超の動画をつくった
同じGunosyで、女性向けアプリ「LUCRA」の中で配信する動画コンテンツの制作を担当しました。恋愛リアリティショー「3LDK 〜ラブ or マネー〜」や、漫画の動画、トレンドニュースの番組です。
制作の予算は、Gunosyに出資していたKDDIから調達しました。有名なプロデューサーを起用し、社外の制作チームと連携して制作・配信し、アプリ内での再生は合計1,000万回を超えています。
自社の予算だけではできなかった規模のコンテンツを、資本関係のある会社と組むことで実現した事例です。
事例3:地方新聞社と組み、単独では届かなかった企業に届けた
タイミーでは、法人の新規獲得のために、地方新聞社とのアライアンスを率いました。IT企業はオンラインのチャネルには強い一方で、地域に根ざした対面の関係を持っていません。地方新聞社には、地元企業との関係、地域での信頼、そして販売店という拠点がありました。
私は自分でつながりをつくり、双方の得が最大になる形を探して、提案を何度もつくり直しました。合意した座組は、新聞社から見込みの企業を紹介してもらい、その対価として新聞社に広告を出稿する、というものです。結果として、中堅規模の企業を十数社、新たに獲得し、新聞社の販売店を起点にサービスを案内するモデルもつくりました。
目星はつけられても、最後に合意するのは人と人。
アライアンスの主な形
アライアンスには、いくつかの形があります。
| 形 | 中身 | 向いているとき |
|---|---|---|
| 業務提携 | 販売、開発、コンテンツなどで協力する。資本は動かない | まず小さく組んで、相性を確かめたいとき |
| 資本提携 | 出資を伴う提携 | 長く深く組むことが決まっているとき |
| 共同事業 | 新しい事業を一緒に立ち上げる | 双方の持ち物を合わせて、新しい市場をつくりたいとき |
私が担当してきたものの多くは、業務提携から始まっています。番組の提供、紹介と広告出稿の交換のように、まずは互いの持ち物を少しずつ出し合う形で組み、うまくいけば広げていく。最初から大きな契約を目指すより、合意までの距離が短くなります。
合意にたどり着くまでの4つの進め方
3つの事例に共通していたことを、進め方としてまとめます。
- 相手の持っているものを知る:信頼、関係、拠点、コンテンツ。相手が自分では価値に気づいていないものもある
- 相手の得を、自分ごととして考える:自社が欲しいものではなく、相手が困っていること、相手が欲しいものから考える
- 自分でつながる:紹介を待たず、自分で足を運び、相手と話す
- 何度でも提案し直す:最初の提案が通ることはほとんどない。断られた理由から、双方に得がある形をつくり直す
AIで候補の企業を探したり、提案の材料を集めたりすることは、これからどんどん簡単になります。それでも、最後に合意するのは人と人です。アライアンスは、人が介在する価値が最もはっきり残る仕事の一つだと考えています。人を巻き込む考え方は、巻き込み力とはで書いています。
よくある問い
アライアンスとは何ですか?
企業同士が、互いの持っている技術、顧客、信頼、拠点などを持ち寄り、単独ではできないことを実現するための提携です。資本を伴わない業務提携から、出資を伴う資本提携まで、形はさまざまです。
アライアンスと業務提携の違いは何ですか?
業務提携はアライアンスの一つの形です。アライアンスは、業務提携や資本提携、共同での事業など、企業同士が協力する関係を広く指す言葉として使われます。
アライアンスを成功させるコツは何ですか?
相手にとっての得を、自分ごととして考え抜くことです。自社の都合だけの提案は通りません。相手が持っているものと、相手が困っていることを知ったうえで、双方に得がある形を何度でもつくり直すことが大事です。
