場所を市場にする:大崎上島・横瀬町で考えた、地方と企業の組み方
結論
地方と企業が組むときは、地方を「支援する対象」ではなく、企業が自社だけでは手に入れられないもの(場所、規模、歴史、人のつながり)を持つ相手として捉えると、双方に得のある形が見えてきます。場所そのものを、企業にとっての市場にするという発想です。
- 日本経済の約3分の2は、東京圏以外の地方にある。地方は小さな市場ではない
- 大崎上島のハッカソンでは、島全体を「ラボ」として企業に開き、規制で進みにくい実証実験を呼び込む案で優勝した
- 企業が地方に求めるもの、地方が企業に求めるものを、同じ表に並べると、組み方が見えてくる
約3分の2
日本の総生産のうち、東京圏以外の地方が占める割合(2022年度)
地方創生というと、自治体の取り組みや、企業の社会貢献として語られることが多いと思います。けれど、企業の側から見ると、地方はもっと違う姿をしています。
地方は、企業が自社だけでは手に入れられないものを持っている相手です。この記事では、学生時代に参加した2つの地方のプロジェクトをもとに、地方と企業の組み方を考えます。
地方は、小さな市場ではない
最初に、規模の話をしておきます。内閣府の県民経済計算(2022年度)をもとにした報道によれば、東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)以外の43道府県の総生産は約394兆円。東京圏の約201兆円と合わせると、日本経済の約3分の2は、地方にあることになります。
日本経済の3分の2は、地方にある。
それでも、地方の企業や自治体と組もうとする都市の企業は、多くありません。地方の可能性が見えていないか、見えていても入り方が分からないからだと思います。
事例1:島全体を「ラボ」として、企業に開く
2018年、広島県の大崎上島をテーマにした、地方創生のハッカソンに参加しました。
大崎上島は、造船業や観光業が盛んな一方で、人口の流出によって地域の衰退が課題になっていました。提案したのは、島全体を「ラボ」として、事業者に使ってもらうプランです。法律の規制などで実証実験が進みにくい事業を、積極的に島に呼び込む。そして、新しい取り組みが次々に生まれる「最先端の島」として発信していく。この提案で、優勝しました。
いま振り返ると、この提案の考え方は、島を「助けてもらう場所」ではなく、企業が自社だけでは手に入れられない「実験できる場所」を持っている相手として捉え直したことにあります。島にとっては新しい人と仕事が来て、企業にとっては実験の場が手に入る。場所そのものが、企業にとっての市場になります。
事例2:現代アートと、町を組み合わせる
同じころ、現代アートと地方創生を組み合わせた企画が、リクルートと埼玉県横瀬町の共同プロジェクトとして採択され、実現しました。町と企業が組み、町にある場所を新しい取り組みの舞台にした例です。
企業が地方に求めるもの、地方が企業に求めるもの
2つの事例から考えると、地方と企業の組み方は、双方が求めるものを並べることから始まります。
| 企業が地方に求めるもの | 地方が企業に求めるもの |
|---|---|
| 実証実験ができる場所と規模 | 新しい仕事と、人の流れ |
| 地域の人とのつながり、信頼 | 外からの知恵と、売り方 |
| 地域に残る歴史や物語 | 地域の価値を、外に伝えてくれる存在 |
| 対面で会える拠点 | 長く関わってくれる相手 |
左の列は、都市の企業が自社だけでは手に入れにくいものです。右の列は、地方が自分たちだけでは手に入れにくいものです。この2つが重なるところに、組む理由が生まれます。
社会人になってから担当した地方新聞社との座組も、同じ形をしていました。タイミーで、地方新聞社が持つ地域の信頼と販売店という拠点を借り、新聞社には広告の出稿という得を返す形で組んでいます。経緯は販路開拓とはで書いています。
歴史は、いまからはつくれない
最後に、私が地方に強くひかれている理由を書いておきます。
これからの事業で差がつくのは、ストーリーだと考えています。そして、ストーリーの差を最後に決めるのは、歴史です。歴史は、いまからはつくれません。都市の歴史は、上から塗り替えられて浅くなっていく。一方で、地方には歴史が残っています。それは、AIにも真似できない、有限の資産です。その考え方は、ストーリーの差は、最後は歴史で決まるで書いています。
よくある問い
企業が地方創生に関わるメリットは何ですか?
自社だけでは手に入れにくいものを得られることです。実証実験ができる場所、地域の人とのつながり、地域に残る歴史や物語などです。社会貢献としてだけでなく、事業として得があるかを考えると、関わりが長続きします。
地方と企業は、どう組めばいいですか?
企業が地方に求めるものと、地方が企業に求めるものを並べ、重なるところを探します。片方だけが得をする形は続かないので、双方の得が最大になる形を何度もつくり直すことが大事です。
地方の市場は、本当に大きいのですか?
内閣府の県民経済計算(2022年度)をもとにした報道では、東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)以外の43道府県の総生産は約394兆円で、全国の約3分の2を占めています。
出典
