chapter 03 / エモと数値

LTVとは:獲得単価ではなく「残る人」に予算を寄せる考え方

結論

LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客が取引を始めてから終えるまでに、事業にもたらす利益の合計です。広告をLTVで評価すると、安く集まる人ではなく、長く残ってくれる人に予算を寄せられるようになります。

  • 獲得単価だけで広告を評価すると、すぐにやめてしまう人を安く集める広告が「効率がいい」と判断されてしまう
  • LTVを予測するモデルを自分でつくり、継続率と収益性まで含めて広告を評価する仕組みに変えた
  • 結果、継続率と収益性(IRR)はそれぞれ最大30%改善。プロダクトの機能でもLTVは上げられる

最大30%

継続率の改善

最大30%

収益性(IRR)の改善

100本以上

分析のために書いたSQLのクエリ

LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とは、一人の顧客が取引を始めてから終えるまでに、事業にもたらす利益の合計です。アプリであれば、インストールしてから使わなくなるまでに生む収益の合計にあたります。

言葉としてはよく知られていますが、広告の現場では、LTVよりも獲得単価(1人を獲得するのにかかった広告費)が重視されがちです。この記事では、なぜLTVで広告を評価すべきなのか、Gunosyで実際にやったことをもとに書きます。

獲得単価だけを見ると、何が起きるか

獲得単価は、すぐに分かります。広告を配信した翌日には数字が出て、比べるのも簡単です。

ただ、獲得単価が安い広告が、事業にとっていい広告とは限りません。インストールしてすぐにやめてしまう人を安く集めても、その人は収益を生みません。むしろ、獲得単価だけで評価を続けると、やめやすい人を集める広告に予算が寄っていくことさえあります。

安く集まる人と、長く残ってくれる人は、同じとは限らない。

よくクリックされる広告が、いい広告とは限らないで書いたのと同じ構造です。途中の数字ではなく、事業の目的に近い数字で広告を評価する。LTVは、その「目的に近い数字」の代表です。

事例:LTVの予測モデルを自分でつくった

新卒で入ったGunosyでは、女性向けアプリ「LUCRA」と、ニュースアプリ「グノシー」の新規ユーザーの獲得を担当しました。目的は、使い続けてくれるユーザーを最大化することです。

待てないなら、予測する

LTVの弱点は、確定するまでに時間がかかることです。数か月待たないと分からない数字では、毎日の広告の判断に使えません。

そこで、利用データから将来のLTVを予測するモデルを自分でつくりました。分析チームに頼っていると判断が遅れるので、SQLをゼロから独学で覚え、生のデータを自分で集めて分析しました。書いたクエリは100本を超えています。

予測したLTVで、広告を評価し直す

予測したLTVをもとに、広告の費用対効果(ROAS)をKPIにして運用しました。インストール単価ではなく、その広告から来た人が、どれだけ長く使い、どれだけ収益を生むかで広告を評価する仕組みです。

その結果、継続率は最大30%、収益性(IRR)も最大30%改善しました。ROASの考え方は、ROASとはで詳しく書く予定です。

LTVは、広告だけでなく商品でも上げられる

LTVは、広告で「残る人を連れてくる」だけでなく、商品の側で「残ってもらう」ことでも上げられます。

LUCRAでは、継続率と、アプリを開く頻度が下がっていることが大きな課題でした。そこで、毎日くじに参加でき、当たるとスイーツなどがもらえる抽選機能を企画し、承認を得て、実装まで主導しました。結果、継続率は25%、収益性は35〜40%改善しています。

マーケティングの担当者が、広告だけでなくプロダクトの機能まで考えられたのは、Gunosyのマーケティングチームが「プロダクトのすべての意思決定」を担う組織だったからです。LTVを上げる手段は、広告の外にもあります。

LTVの計算方法

LTVの計算式は、事業の形によっていくつかあります。よく使われるのは次の2つです。

計算式向いている事業
平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間ECや店舗など、くり返し購入される事業
1人あたりの月の利益 ÷ 月の解約率月額課金のサービスやアプリ

たとえば、1人あたりの月の利益が500円、毎月5%の人がやめていくサービスなら、LTVは「500円 ÷ 0.05 = 1万円」になります。この場合、1人を獲得するのに1万円以上の広告費をかけると、その人からは利益が残らない計算です。

ここで大事なのは、売上ではなく利益で計算することです。売上でLTVを出すと、原価や手数料の分だけ、使ってよい広告費を大きく見積もってしまいます。

LTVと獲得単価の関係

LTVが分かると、広告にいくらまでかけてよいか(許容できる獲得単価)が決まります。

獲得単価が安い広告獲得単価が高い広告
LTVが高い人が来る最も良い。予算を寄せるLTVが上回るなら投資する価値がある
LTVが低い人が来る安く見えても、利益は残らない止める

獲得単価だけを見ていると、表の左下(安いけれど残らない)と右上(高いけれど残る)を取り違えます。LTVで評価する仕組みをつくることは、この取り違えをなくすことでもあります。

LTVで考えるための3つの手順

  1. LTVを、事業の言葉で定義する:何を「利益」とし、いつまでを「生涯」とするのか
  2. 早く分かる指標から、LTVを予測する:早い段階で分かる数字のうち、どれが将来のLTVと強く関係しているかを調べる
  3. 広告も商品も、予測したLTVで評価する:獲得単価が高くても、LTVがそれを上回るなら、投資する価値がある

1をあいまいにしたまま計算を始めると、部署ごとに違うLTVが出てきます。最初に定義をそろえることが、いちばん大事です。

よくある問い

LTVとは何ですか?

顧客生涯価値のことで、一人の顧客が取引を始めてから終えるまでに、事業にもたらす利益の合計です。アプリなら、インストールしてから使わなくなるまでに生む収益の合計にあたります。

LTVは、なぜ広告運用で大事なのですか?

獲得単価だけを見ると、すぐにやめてしまう人を安く集める広告が良く見えるからです。LTVで評価すると、長く残って収益を生む人を連れてくる広告に、予算を寄せられます。

LTVが分かるまで待てない場合は、どうすればいいですか?

実際の利用データから、将来のLTVを予測するモデルをつくります。予測できれば、LTVが確定する前の段階でも広告を評価できます。

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