chapter 03 / エモと数値

ROASとは:ROASを追う前に決めておくべき3つのこと

結論

ROAS(広告費用対効果)とは、広告費に対して、どれだけの売上が返ってきたかを示す指標です。追う前に、どの売上を数えるか、いつまで数えるか、何%を目標にするかを決めておかないと、数字は合っていても判断を誤ります。

  • ROASは「広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100」。計算は簡単だが、分子の売上をどう定義するかで意味が大きく変わる
  • 目先の売上だけで計算すると、継続して使う人の価値が抜け落ちる。将来の売上はLTVの予測で入れる
  • 予測したLTVをもとにROASをKPIにした結果、継続率と収益性が最大30%改善した

年間約20億円

Gunosyで運用した広告予算

8割

社内で運用した広告の割合

ROAS(Return On Advertising Spend、広告費用対効果)とは、広告費に対して、どれだけの売上が返ってきたかを示す指標です。

計算式はシンプルで、「広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100」。100万円の広告で300万円の売上があれば、ROASは300%です。

Gunosyでは、年間約20億円の広告予算を、このROASをKPIにして運用していました。計算は簡単ですが、実際に使うと、追う前に決めておかなければいけないことがいくつもあると分かります。

ROAS・ROI・CPAの違い

広告の効果を表す指標はいくつもあり、混同されがちです。

指標計算式分かること
ROAS広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100広告費に対して、売上がどれだけ返ってきたか
ROI(利益 − 投資額)÷ 投資額 × 100投資に対して、利益がどれだけ残ったか
CPA広告費 ÷ 獲得件数1件の獲得に、いくらかかったか

たとえば、100万円の広告で300万円の売上があり、原価が200万円だったとします。ROASは300%ですが、利益は100万円なので、広告費を差し引くと利益は残りません(ROIは0%)。ROASは売上の指標、ROIは利益の指標です。

決めておくこと1:どの売上を数えるか

ROASの意味は、分子の「売上」をどう定義するかで大きく変わります。

  • 初回の購入だけを数えるのか、そのあとの購入も含めるのか
  • アプリなら、課金だけか、広告収益も含めるのか
  • 広告を見たあと、自分で検索して来た人の売上も含めるのか

ここが部署ごとにずれていると、同じ広告でもROASが何通りも出てきます。数字を見る前に、何を売上とするかをそろえることが先です。

決めておくこと2:いつまで数えるか

二つ目は期間です。広告を出した直後の売上だけで計算すると、ROASはたいてい低く見えます。続けて使ってくれる人の価値が、まだ数字に表れていないからです。

目先の売上で計算したROASは、残ってくれる人の価値を数えていない。

Gunosyでは、この問題をLTVの予測で解きました。利用データから将来の収益を予測するモデルを自分でつくり、予測したLTVをもとにROASを計算して、広告を評価していました。分析チームに頼らずに判断するためにSQLを独学で覚え、書いたクエリは100本を超えています。

その結果、継続率は最大30%、収益性(IRR)も最大30%改善しました。LTVの考え方は、LTVとはで書いています。

決めておくこと3:何%を目標にするか

三つ目は目標値です。ROASは高いほどいいように見えますが、ROASは売上の指標であって、利益の指標ではありません。原価や手数料を差し引くと、ROASが高くても利益が出ていない、ということは起こり得ます。

目標は、利益が出る最低ラインから逆算します。

手順考えること
1商品の利益率はいくらか
2どこまでの将来の売上を含めるか(決めておくこと2)
31と2から、赤字にならないROASの下限を出す
4事業の段階に合わせて、下限より上に目標を置く

成長を優先する時期は下限に近いところまで攻め、利益を優先する時期は目標を上げる。ROASの目標は固定ではなく、事業の判断そのものです。

たとえば、利益率が40%の商品なら、赤字にならないROASの下限は「1 ÷ 0.4 × 100 = 250%」です。2回目以降の購入まで含めて利益が2倍になるなら、初回の売上だけで見た下限は125%まで下がります。何を含めるかで、攻められる広告の範囲が大きく変わることが分かります。

ROASを、誰でも正しく判断できる数字にする

Gunosyでは、広告の8割を社内で運用していました。クリエイティブの企画から入稿、毎日の調整までをチームで回していたので、ROASを「一部の人だけが読める数字」にしないことが大事でした。

そこで、誰でも最速で正しい意思決定ができるモニタリングの環境を整えました。数字の定義が人によって違うと、議論の大半が「どの数字が正しいか」に使われてしまいます。決めておくこと1〜3をそろえたうえで、チームの誰もが同じ数字を見て判断できる状態をつくることが、ROASを使いこなす前提です。

ROASは、決めるべきことを決めてから使えば、広告の判断をとても速くしてくれる指標です。KPIの置き方全般は、KPI設定で書く予定です。

よくある問い

ROASとは何ですか?

広告費に対して、どれだけの売上が返ってきたかを示す指標です。「広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100(%)」で計算します。100%なら、使った広告費と同じだけの売上があったことになります。

ROASとROIの違いは何ですか?

ROASは広告費に対する売上を見る指標、ROIは投資に対する利益を見る指標です。ROASが高くても、原価や手数料を差し引くと利益が出ていないことがあるので、目標を決めるときは利益まで計算します。

ROASの目標は、どう決めればいいですか?

利益が出る最低ラインから逆算します。商品の利益率と、どこまでの将来の売上を含めるかを決めると、赤字にならないROASの下限が分かります。その上で、事業の成長段階に合わせて目標を置きます。

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